美容医療の中でも定番とされるボトックス注射
眉間や額の表情ジワ、エラの張り、ふくらはぎの張り、多汗症など、幅広い悩みに対応できる治療として多くの方に選ばれています。

しかし、いざ受けてみようと思うと「ボトックスって1種類じゃないの?いったい何種類あるの?」「価格が違うのはなぜ?」「どれを選べばいいの?」と疑問を持つ方も少なくありません。
最近では比較的安価な韓国製の製剤もよく目にするようになり、選択肢が増えた一方で、どれを選べばよいか迷う方も少なくありません。

今回は、当院で取り扱っているアラガン社製ボトックスと、韓国製のボツラックスメトックスを中心に、それぞれの特徴や違い、選び方のコツ、施術間隔や抗体リスクといった重要なポイントまで詳しく解説します。

ボトックスとは

ボトックスとは、ボツリヌス菌という細菌から作られるたんぱく質「ボツリヌストキシン」を主成分とする注射製剤です。
神経の働きを一時的にブロックする作用があり、筋肉の過剰な動きを抑えることで、シワや筋肉の張りといった美容上の悩みを改善します。

本来、ボツリヌストキシンはA型やB型などの複数の型に分類されますが、美容医療で主に使用されているのは「A型ボツリヌストキシン」です。
表情筋による動的なシワ(眉間・額・目尻など)をやわらげ、さらにエラ張りの改善、ふくらはぎや肩の筋肉の張り、多汗症の治療にも応用されています。

ただし、「ボトックス」という名称は、アメリカのアラガン社が開発・製造しているA型ボツリヌストキシン製剤の商品名(商標)です。
薬理作用としては他社製品と共通していますが、「ボトックス」は本来、アラガン社製のみに使われるべき呼称です。

しかし、日本ではボツリヌストキシン製剤全般を「ボトックス」と呼ぶことが一般的になっており、他社の製品も同様に呼ばれることが多くなっています。
このことが混乱を招きやすく、製剤選びで誤解を招く原因にもなっています。

さらに重要なのは、日本で厚生労働省の承認を受けているボツリヌストキシン製剤は、アラガン社の「ボトックスビスタ」ただひとつという点です。
この製剤は日本人を対象とした臨床試験に基づいて安全性と有効性が評価され、2009年に美容目的での使用(眉間の表情ジワ)で承認を取得しました。
以後、美容皮膚科や美容外科で広く用いられています。

一方で、韓国や中国、欧州などで製造されている他のボツリヌストキシン製剤(例:ボツラックスメトックス、ニューロノックス、リズトックスなど)は、日本国内では承認されておらず、いずれも医師の責任で個人輸入され、使用されています。

ボトックス比較|それぞれの特徴と違い

ボトックスビスタの特徴

ボトックスビスタは、アメリカのアラガン社が製造するボツリヌストキシンA型製剤です。
アラガン社は、世界的に認知されている米国の製造メーカーであり、医療用ボツリヌストキシン製剤のパイオニアです。
日本でも2009年に厚生労働省の承認を受けており、国内で美容目的に正式に使用できる唯一のボツリヌストキシン製剤となっています。

ボトックスビスタの大きな魅力は、その安定した品質と再現性の高さにあります。
製造過程の管理が極めて厳密で、一定の効果と安全性が保たれていることから、世界中の医療機関で広く使用されています。

特に日本人に対して行われた臨床試験に基づいた承認を受けているため、日本人特有の骨格や筋肉の動きにも適しており、仕上がりも自然で違和感が出にくい点が利点です。
施術経験の少ない方や、安全性を重視する方にとって、安心して選べる製剤です。

また、ボトックスビスタは抗原性(抗体ができやすい性質)を抑えるように設計されており、繰り返しの施術でも効果が持続しやすいという特徴もあります。

ボツラックスの特徴

ボツラックスは、韓国のヒューゲル社が製造しているボツリヌストキシン製剤です。
韓国国内では非常に多くのクリニックで採用されており、東アジアを中心に急速にシェアを広げてきた製品です。

日本では未承認薬の扱いとなりますが、韓国では医療承認を受けており、国の基準に則って製造されています。
そのため、安全性についても一定の信頼が寄せられています。

特徴としては、ボトックスビスタに比べて価格が手頃で、継続しやすい点が挙げられます。
コストパフォーマンスを重視したい方や、ボトックス経験者で効果の出方が把握できている方には選ばれる傾向があります。

メトックスの特徴

メトックス韓国の製薬会社メディトックス社が製造するA型ボツリヌストキシン製剤で、MDFS(韓国食品医薬品安全処)の承認を受けた薬剤です。
従来のフリーズドライ法と異なり「真空乾燥技術」を採用し、バイアル底部の粉残りを抑え、希釈時の劣化を防ぎ、高い品質安定性を実現しています。

日本では未承認薬の扱いとなりますが、ボツラックスと同じようにコストパフォーマンスにも優れ、アラガン社のボトックスビスタに比べて安価なため、費用を抑えて継続治療したい方や過去にボトックスを使用し効果を把握している方に選ばれる傾向にあります。
ただし、効果の発現や持続期間にはやや個人差が出やすく、製剤の安定性も含めて評価が分かれることがあります。
施術計画を慎重に立てたい方は、医師と相談しながら製剤を選ぶことが大切です。

効果の持続期間と施術間隔について

ボトックスの効果は、施術から2〜3日後に現れ始め、1〜2週間ほどで安定し、おおよそ3~6か月で効果が薄れていきます。
効果の持続は部位によって異なり、額や眉間、目尻などの表情筋では3〜4か月エラやふくらはぎなど大きな筋肉では4〜6か月程度が目安となります。

そして重要なのが、施術の間隔を適切に守ることです。
ボツリヌストキシンを短い間隔で繰り返し注入してしまうと、体内で抗体ができてしまうリスクがあります。
抗体ができると、製剤に対する感受性が下がり、同じ量を注射しても効果が得られにくくなる可能性があります。

一般的に、同一部位に対する注射は3か月以上の間隔を空けることが推奨されています。
効果が切れたタイミングで過剰に施術を受けないように注意することが、長くボトックス治療を継続するための重要なポイントです。

特にボトックスビスタは、抗体ができにくい設計がなされているため、長期的な治療計画を立てたい方には適しています。

ボトックス選びの際に押さえておきたい判断基準

ボトックスビスタボツラックス、そしてメトックス
さまざまある製剤の中からどれを選ぶべきかは、通う予定のクリニックや、一人ひとりの目的や予算、施術経験によって異なります。

ボツリヌストキシン製剤にはさまざまな種類がありますが、厚生労働省の承認を受けているのはボトックスビスタのみです。
初めてボトックス治療を受ける方、自然な変化を求める方、安全性を重視したい方には、ボトックスビスタが非常に適しています。

一方で、過去にボトックスを経験しており、コストを重視する方や頻繁に施術を受けたい方にはボツラックスメトックスも有効な選択肢といえるでしょう。

製剤選びに加えて、誰がどのように注入を行うかも非常に重要です。
ボトックスの仕上がりは、注入する深さや量、角度などによって大きく変わり、医師の経験や技術によっても結果が左右されます。
効果を最大限に引き出し、満足のいく仕上がりを得るためには、製剤の特性を理解し、適切な施術間隔を守りながら、信頼できる医師と相談しつつ治療を進めていくことが大切です。

当院では、カウンセリングのみのご予約も承っております。
自分に合ったボツリヌストキシン注射でのシワ改善治療をお考えの方は、どうぞお気軽にご相談ください。

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