肌にやさしい日焼け止めの選び方〜紫外線吸収剤に注意しよう〜

日差しの強い季節になると、紫外線対策として日焼け止めを使用する機会が増えます。
シミやシワなどの肌老化を防ぎ、皮膚がんのリスクを下げるためにも、日焼け止めは欠かせない存在です。
しかし、市販されている日焼け止めのすべてが肌にやさしいわけではありません。
中には肌トラブルの原因となる成分が含まれているものもあり、敏感肌の方やお子さま、妊娠中・授乳中の方は、特に注意が必要です。

近年、日焼け止めに含まれる「紫外線吸収剤」が、肌への刺激やホルモンバランスへの影響、さらには海洋環境への悪影響を及ぼす可能性があるとして注目を集めています。
こうした成分は、無意識のうちに肌の負担や健康リスクを高めていることもあるため、成分表示を確認して適切な製品を選ぶことが重要です。
本記事では、紫外線の基本知識や日焼け止めの種類、それぞれの成分の特徴とリスクについてわかりやすく解説しながら、肌にやさしく安心して使える日焼け止めの選び方を紹介します。
毎日使うものだからこそ、安全性に配慮した選択を心がけましょう。

紫外線とは？UV-AとUV-Bの違い

紫外線は、波長の違いによって主にUV-AとUV-Bに分類されます。
UV-Aは波長が長く、肌の奥の真皮層にまで到達し、シワやたるみなど肌の老化（光老化）を引き起こします。
一方、UV-Bは表皮に強く作用し、日焼けや炎症、シミの原因となります。
どちらも過剰に浴びることで肌に悪影響を及ぼすため、日焼け止めでの対策が必要になります。

日焼け止めの紫外線カット成分は2タイプ

日焼け止めに使われる紫外線防止成分は、「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤（ノンケミカル）」の2種類があります。

紫外線吸収剤
肌表面で紫外線を吸収し、熱などに変えて放出することで紫外線によるダメージを防ぎます。
メリット　：白浮きしにくく、使用感が軽やか
デメリット：多くの市販品に使用されていますが、化学反応を伴うため、敏感肌には刺激となることがあります。
紫外線散乱剤（ノンケミカル）
酸化チタンや酸化亜鉛などの微粒子が肌の表面にとどまり、紫外線を物理的に反射・散乱させることで防御します。
メリット　：肌にやさしく低刺激なため、赤ちゃんや敏感肌の方にも使いやすい
デメリット：白浮きしやすく、乾燥を感じることもあり、使用感には好みが分かれます。

紫外線吸収剤に含まれる代表的な成分とリスク

紫外線吸収剤の中でも、とくに注意が必要な紫外線吸収剤の一つが「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」です。
UV-B（肌に赤みや炎症を起こす紫外線）を効果的にカットできるため、多くの日焼け止めに配合されていますが、いくつかのリスクが指摘されています。

主な懸念点

ホルモンかく乱作用の可能性
動物実験では、体内のホルモン「エストロゲン」に似た作用（＝エストロゲン様作用）を示すことが報告されています。
エストロゲン様作用とは、エストロゲンと似た構造をもつ化学物質が体内の受容体に結合し、本来のエストロゲンと同様の働きをしてしまう現象です。
これにより、ホルモンバランスが乱れる可能性があると考えられています。
肌への刺激
使用後に、かゆみ、赤み、湿疹などの肌トラブルを引き起こす可能性があります。
特に敏感肌の方は注意が必要です。
光分解によるダメージ
紫外線を浴びることで成分が分解され、その過程で活性酸素が発生し、かえって肌にダメージを与えることがあります。
環境への影響
海水に流れ出た際、サンゴ礁や海洋生物への悪影響が報告されており、ハワイやパラオなどでは使用が法律で禁止されている成分でもあります。

そのほかの注意が必要な成分

注意する成分名	リスク	推奨される対応
オキシベンゾン	ホルモン様作用・環境リスク（国に地域によっては使用禁止の規制あり）	避けた方が安心
テレフタリリデンジカンフルスルホン酸	刺激性の可能性	敏感肌は注意
ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル	一部でアレルギー・ホルモン作用の報告・懸念	妊婦・敏感肌は避ける
オクチルトリアゾン	刺激性は低いが、化学反応を伴うため慎重に	他成分との組み合わせ、敏感肌は注意

こうした紫外線吸収剤は、敏感肌や妊娠中の方にとってはリスクとなりうるため、日焼け止めの成分表示を確認しておくことが大切です。

ノンケミカル処方の日焼け止めとその成分

紫外線散乱剤を用いた日焼け止めは、肌にやさしく、刺激が少ないことが特徴です。
主に以下の成分が使用されています。

酸化チタン
UV-Bを主に防ぎ、皮膚刺激が少ない。
赤ちゃん用日焼け止めにも広く使われている。
酸化亜鉛
UV-AとUV-B両方の防御。
抗炎症作用があり、ニキビ肌やアトピー体質の方にもおすすめ。

以前は白浮きやきしみが気になりましたが、現在は微粒子化やコーティング技術の進化により、使用感も大きく改善されています。

SPF・PA表示の意味と目安

日焼け止めには「SPF」と「PA」という表示があります。

SPF（Sun Protection Factor）
UV-Bに対する防御力を表します。
数値が高いほど効果が強く、SPF30は、紫外線により肌が赤くなり始めるまでの時間を、何も塗らない場合と比べて約30倍に延ばせる目安です。
PA（Protection Grade of UVA）
UV-Aに対する防御力を「+」の数で示します。
PA++であればある程度の防御力、PA++++は非常に高い防御力を意味します。

通勤や買い物などの日常生活では、SPF30・PA++程度でも十分対応できます。
一方、長時間の屋外活動やレジャーには、SPF50・PA+++以上の製品が望ましいです。
肌負担を避けるためにも、必要以上に強力なものを選ばず、シーンに応じて使い分けることがポイントです。

成分表示の確認と正しい選び方

日本ではすべての化粧品に成分表示が義務付けられています。
パッケージや箱に記載されている成分を確認することで、紫外線吸収剤が含まれているかどうかを見分けることが可能です。

「紫外線吸収剤不使用」「ノンケミカル」「敏感肌用」などの表記がある製品は、紫外線散乱剤を使用していることが多く、肌にやさしい処方になっています。
製品選びの際には、こうした表示と成分名の両方をチェックする習慣を身につけると安心です。

安心して使える日焼け止めを選ぶために

毎日使うものだからこそ、肌へのやさしさ、安全性、そして環境への配慮が求められます。
紫外線吸収剤は有効な成分である一方、肌や健康、環境への影響を理解したうえで使うことが大切です。
とくに以下のような方は、ノンケミカル処方の日焼け止めの使用を検討しましょう。

敏感肌やアレルギー体質の方
妊娠中や授乳中の方
皮膚が敏感な乳幼児・小児
環境問題に配慮したい方
毎日使い続けることに不安を感じる方

日焼け止めは、紫外線から肌を守るために欠かせないスキンケアアイテムです。
しかし、すべての日焼け止めが肌にやさしいとは限りません。
とくに「紫外線吸収剤」を含む製品は、人によっては肌トラブルや健康への影響、さらには環境への負荷も指摘されています。
例えば、「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」や「オキシベンゾン」といった成分には、ホルモンに影響を及ぼす可能性や、海洋汚染との関連性が報告されています。
一方で、「紫外線散乱剤（ノンケミカル）」を使用した日焼け止めは、比較的、肌への刺激が少なく、敏感肌やお子さまにも適しているとされています。
代表的な成分には「酸化チタン」や「酸化亜鉛」といった成分が用いられ、近年では技術の進歩により白浮きしにくく快適な使い心地の製品も増えてきました。

日焼け止めを選ぶ際は、成分表示をよく確認し、自分の肌質や使用シーンに合ったものを選ぶことが大切です。
また、SPFやPAの数値は高いほど良いと思われがちですが、日常生活では過剰なスペックはかえって肌への負担になることもあります。
ライフスタイルに応じて、適切なUVカット効果のものを使い分けるようにしましょう。

毎日使うものだからこそ、肌にも環境にもやさしい、安全性の高い日焼け止めを選ぶことが大切です。
大切な肌を守るために、成分や用途を正しく理解し、安心して使える日焼け止めを選びましょう。